神々が遊ぶ庭④〜最高の温泉は何も無い,だった話。

毎回登山で楽しみにしているのが、実は登山の後の温泉♨️です。

それは言ってみれば、素晴らしいレストランで美味しい料理をいただいた後のデザートみたいなもの。

つまり欠かせない、ということです。

 

北海道は素晴らしい温泉が彼方此方にあるから、今回はその辺りも大いに期待していたのですが。

これまでの人生の中でも、指折りの歓びを感じさせてくれた温泉と出会うことができました‼️

それは、山頂で素晴らしい雲海を満喫したものの、その雲海に追いつかれて途中からガッツリと降られ、疲労に加えて冷え切った状態で下山した十勝岳の麓すぐのところにある「吹上露天の湯」です。

 

下山直後は「今更露天とかもう濡れたく無いし!」などと思ってしまっていた私ですが、そんな私を例によってシゲタカ君が半ば強引に説得して、行ってみると!

ワオ!!ワイルド!!露天風呂とはまさにこのこと。脱衣室、とか洗い場,とか一切ない。ただただ手付かずの自然の中にある、剥き出しの温泉。

因みに混浴です‼️

看板に由来が書かれていて、100年ほど昔のお金持が整備したらしい。

まだ小雨が残る曇天を仰ぎながら熱々の温泉に浸かり、ジワジワと全身がほぐれていくのを味わう。

すぐ横を流れる渓谷のせせらぎ。

雨に濡れてしっとりと光る岩と木々の緑。

据付のコップで掛け流しの温泉をごくりと飲んでみると、空腹の胃にアルカリのお湯が染み渡るよう。

 

3時間かけて定期的に訪れている、というお年寄りに聞くところによれば、お掃除などのメンテナンスは常連さんたちによって為されているそう。

因みに後日、山で出会った人が、この温泉の横でテント張って宿泊した,とのことでしたが、夜ともなれば、明かりもないから漆黒の闇の中の温泉となるわけであり、それもまた何か獣との混浴もアリなわけで。。。怖すぎて私にはとっても無理です。

 

これまで体験してきた、贅沢な設備や、ライトアップに湯煙が漂うムードたっぷりの露天風呂も大好きですが、この吹上露天の湯は、まさに何も無い。何も無いのだけれど、身体と心が満たされるものが全てある,とも言える。

無いようで在るし、在るようで無い、というマトリックスの世界のようなどうでもいい話ですが。

翌日,富良野にある「北の国から」という1980年代から20年かけて撮影された、伝説的テレビドラマの舞台となった主人公一家の住まい「ゴローの家」を訪れた際にさらに感慨深く、そんなことについて思いを馳せた次第ですが,それはまた次回。

 

 

 

 

 

 

 

 

神々が遊ぶ庭(カムイミンタラ)〜北海道大雪山で感じたこと③選択〜君は生き延びることができるか⁉️

神々が遊ぶ庭(カムイミンタラ)〜北海道大雪山で感じたこと③は、「選択」について書きます。

私たちは毎日多くの選択をしてますよね。

何気なく選択することもあれば、悩みに悩んで、よしこれだ!と選択して決定することもありますが、ここが実は大切なトコロで。

誰にもさほど影響しないようなこと(例えば、今日のランチは何を食べようか)をまあいいか、で決めても全く問題ありませんが。あ、いや、これも食べることが大好きな僕にはもちろん大切な選択であることも間違い無いのですが、一般的に、です。

誰かに、何かに、あるいは自分にとってすごく大事になってくる事象に関して安易に選択することが,と言うか,そういうことほど後から問題になったり、尾を引いたりしますよね。

自分の中で、普段から大切にしている価値観や考え方、そしてそれらの優先順位が明確になっているなら,そんな「しまった💦」は少ないものですが、日常の中であれやこれらが未整理、未消化状態での意思決定、選択は何かをリスクにかけることになります。

あるいは、自分の中で知らず知らず作り上げてしまっている制限や枠,思い込みに基づく意思決定も同じく、ですね。

 

登山では特に、体調はどうか。天候はどうか。日の出(日の入)時刻に対する現状はどうか。水分摂取量はどうか。装備はどうか(偉そうに書いてる割に忘れ物が多かった事実は無視!笑)などの意思決定によって、時に運命を左右することに。

 

で、今回、最初のアタックはトムラウシ山。事前にシゲタカ君がコースについてシミュレーションしてくれてます。

コースタイムは17時間。

エッ⁉️17時間!!!!!

これは自分にはチョット無理だろ,と思いました。シミュレーションとはいえ、人生初の12時間越えのロングコース。

テント泊は嫌だ,と私がリクエストしたから、トムラウシアタックが長時間の日帰りコースになってしまうのは仕方ないこと。

ただ,とにかく楽しむをテーマにした以上、まずは楽しむ。やってみる。

 

朝、2時半起床で準備をそそくさと済ませ、懐中電灯を装着して真っ暗な山道を粛々と登ります。

いつしか日も上り、懐中電灯を仕舞ったり、防寒具を脱いだり,行動食で準備したパンを齧ったりしながらドンドン進みます。

汗びっしょりになる側から,さすが北海道。少し休憩するだけであっという間に乾いていきます。

トムラウシはアップダウンが実に豊富で。このアップダウンは、コースが単純往復だから帰りもあるわけで。

 

それでも、いくつかのポイントでコースタイムをイメージできてるうちは余裕もあり良かったのですが。。。

 

人間、1番厳しい時に試されますね。

前トム平を過ぎ、苦手な岩場をヒーヒーと乗り越えた標高1758m地点あたり。眼前にトムラウシの雄々しいピークが広がったときが、決断の時、でした。

すでにかなり足はキテます。(ドラクエで言うとHP残存レベルは15くらい💦)

まだ最初の山で旅は始まったばかりでこの後まだ未知の3つの山が残されている。(ドラクエで言うと未知のモンスター3体と戦うことが決まってる、みたいな。因みにドラクエやったことないけど。)

足元からダーッと下りがあって、最後に一気に登ればもうピーク。

ただ、目の前にピークがある、と言うものの、尾根を歩く人の姿はあまりに小さく。

ここからピークまで行って、ここまで戻るのにまだ3時間はかかるよ、とピークからの戻りの登山者の弁。これまでの行程を考えると登山口帰着は19時過ぎに(T-T)

僕の中で、僕と言う経営資源と目の前に広がるトムラウシと帰りのルート,その先の見えない予定との葛藤がスパークしました。今までの自分が作り上げた限界との葛藤もあります。

シゲタカ君は「2人で来てるんだから単独行動は絶対にしない。」と明言してるから、ピークを諦める事は彼の達成を阻むことにもなる。

が、30分ほど悩みに悩んで、最終的に。

僕はピークを踏むことを諦めました。

それを超えたら未見の我との出会いがあったかもしれない。シゲタカ君もきっとメチャ喜んだに違いない。

色々な可能性や歓びを、ピークアタックを諦める,と言う選択をしたことによって失ったわけですが。

全く後悔はありません。


それはヤッパリ、無事に生きて家に帰る,と言う旅の前提の約束と、「プロセスを楽しむ」というテーマを満足させることが、その時点で確信できたからです!!

そう言うわけで、トムラウシは今回私に選択の瞬間と言うことについて、改めてとても大切な学びをくれた山になったのでした!!

 

まだまだ④に続きまーす♪